空き家を解体したあと、「滅失登記」という手続きが必要になることをご存じでしょうか。滅失登記とは、登記簿上に登録されている建物が実際には存在しなくなったことを法務局に届け出る手続きです。
これを行わないと固定資産税を余分に払い続けたり、不動産売買や相続の際に不都合が生じたりする可能性があります。今回は滅失登記の手続きの流れ、用意すべき書類、費用、専門家に依頼する際のメリットとデメリットをわかりやすく解説していきます。
また、今回の記事の内容はYouTube動画でもご参照いただけます。動画でもより細かいニュアンスをご紹介していますので、こちらも合せてご参照ください。
滅失登記とは?
滅失登記とは、建物が取り壊わされたり、自然災害などによって存在しなくなったりした場合に、その事実を法務局に届け出て登記簿から削除する手続きのことです。
登記簿には土地や建物に関する情報が記録されていますが、解体後もそのままにしておくと「実際にはない建物が登記上では存在している」という不一致が生じてしまいます。
そこで滅失登記を行うことで、現状に即した正しい不動産情報に修正でき、将来の土地の売却や相続時にスムーズな取引や手続きが可能になります。
どんなときに必要になるのか(空き家の解体・火災・災害など)
滅失登記は、主に空き家相続後の解体作業のあとに行われます。その他、稀な例ではありますが火事や地震、台風といった自然災害で建物が消えてしまった場合にも必要です。
空き家解体後に滅失登記が必要な理由
空き家を解体したあとに滅失登記をしなければならないのには、いくつかの理由があります。いずれも重要な理由になりますので、それぞれの理由をしっかり抑えておきましょう。
法律上の義務
そもそもですが、建物が無くなった場合には、1か月以内に滅失登記を申請することが義務づけられています。
期限を過ぎてもすぐに罰則が科されるわけではありませんが、怠ることで税金や取引に影響が出るのは事実です。法律上のルールとしても定められている以上、速やかに手続きを行うことが求められます。
固定資産税の課税対象から外すため
滅失登記を行わなければ、登記簿には建物が記録され続けます。そして固定資産税は登記情報をもとに課税されるため、実際には存在しない建物に対して税金がかかってしまいます。
そのため、建物がなくなったときは速やかに滅失登記を行うことが求められます。余計な税負担を避けるためにも、滅失登記は迅速に、確実に行いましょう。
不動産売買・相続のため
将来的に土地を売却や相続するとき、登記簿の情報と現状が一致していないと手続きがスムーズに進まなかったり、手続きできなかったりします。必要な時に手続きがスムーズに進められるよう、建物が存在しなくなった時点で滅失登記をしておきましょう。
滅失登記の手続きの流れ
実際に滅失登記を行う際には、必要な書類をそろえて法務局に申請し、登記完了までの流れを踏む必要があります。ここからは、空き家解体後に滅失登記を行う際の具体的な手順について説明します。
1.必要書類を準備する
滅失登記の申請には、いくつかの書類を用意する必要があります。まず必要となるのが「建物滅失登記申請書」で、これは法務局のホームページからダウンロードすることが可能です。
次に、解体業者が発行する「建物滅失証明書(取り壊し証明書)」「解体業者の資格を証明書」が必要になります。これらの書類がそろっていないと申請が受理されないため、解体業者に事前に確認して準備を整えておきましょう。
2.法務局に申請する
必要な書類がそろったら、お住まいの地域の法務局に申請を行います。申請方法は窓口での提出、郵送、そしてオンライン申請の3つです。窓口の申請の場合、予約が必要になる自治体もあるため、事前にHPなどで随時受け付けか要予約か確認しておきましょう。
窓口で提出すれば、その場で不備を指摘してもらえるので安心ですが、時間が限られている場合は郵送やオンラインの活用も有効です。どの方法を選ぶにしても、記載内容に誤りがないかしっかり確認してから提出しましょう。
3.登記完了までの期間と流れ
滅失登記の申請書類に問題がなければ、通常1週間から10日ほどで登記が完了します。完了後には「登記完了証」が交付され、正式に登記簿から建物が削除されます。この証明書は将来的な不動産取引や税金の手続きに必要になる場合があるため、大切に保管しておきましょう。
滅失登記にかかる費用
滅失登記の費用は依頼の仕方によって異なります。
・自分で書類を揃えて申請する場合:1,000円〜3,000円程度
・土地家屋調査士に依頼する場合:4万円〜5万円程度
自分で申請する場合は、証明書類の発行手数料や郵送代などで1,000円〜3,000円程度が目安となります。一方、土地家屋調査士に依頼する場合は、必要書類の取得や手続き代行の報酬として4万円〜5万円程度必要です。
どちらを選ぶかは、時間や労力をどの程度かけられるかによって判断するとよいでしょう。
滅失登記を土地家屋調査士に依頼するメリットとデメリット
滅失登記は自分でも行えますが、土地家屋調査士などの専門家に依頼する選択肢もあります。ここでは依頼した場合のメリットとデメリットを紹介します。
土地家屋調査士に依頼するメリット
専門家に依頼する最大のメリットは、手続きを一括して任せられる点です。必要な書類の作成や用意から法務局への申請までを代行してくれるため、自分で動く手間を大幅に減らせます。また、書類の不備による再申請のリスクも避けられるため、安心して任せられるのが大きな利点です。
土地家屋調査士に依頼するデメリット
一方で、費用がかかる点が大きなデメリットです。自分で行えば数千円で済むところを、依頼すると数万円の出費が発生します。また、専門家に依頼しても最終的な確認や署名は依頼者自身が行う必要があるため、完全に手間がゼロになるわけではありません。
滅失登記でよくある疑問と注意点
滅失登記を行うにあたって、よくある疑問や注意点を紹介します。
解体後に放置するとどうなる?
滅失登記をせずに放置すると、固定資産税を余計に支払うことになる可能性があります。また、土地を売却しようとした際に登記情報と現状が一致しないことで、手続きに時間がかかるなどのトラブルが発生することもあるでしょう。
さらに、相続時には存在しない建物が相続財産に含まれてしまうおそれもあり、後々大きな問題に発展する可能性も考えられます。
相続登記との兼ね合いは?
相続によって取得した空き家を解体した場合にも、滅失登記は必要です。このとき、相続登記と滅失登記を同時に行うケースもあるため、スケジュールを整理して手続きを進めなければなりません。
火事や災害で建物がなくなった場合はどうする?
火事や地震、台風などで建物が消失した場合も滅失登記の対象です。この場合は、消防署や自治体が発行する罹災証明書などが必要となるケースがあります。
解体ではなく自然災害による滅失であることを証明するため、通常の取り壊し証明書に代えて提出する書類です。手続きの流れ自体は同じですが、必要な証明書類が異なる点に注意が必要です。
まとめ
滅失登記は、空き家を解体したあとに必ず行うべき重要な手続きです。放置すれば余計な固定資産税を支払う、不動産の売却や相続で思わぬトラブルを招く可能性があります。
手続き自体は必要書類を整えて法務局に申請するだけですが、不安がある場合は土地家屋調査士などの専門家に依頼するのも有効な方法です。
空き家を解体したときには、法律で定められた期限内に忘れずに滅失登記を行い、安心して土地を活用できるようにしておきましょう。
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