空き家の管理は悩みのタネ。「いっそ更地にしてスッキリしたい」と思う方は多いでしょう。しかし、建物を取り壊して更地にすると、今度は固定資産税が最大で6倍になることがあるということはご存じでしょうか。
更地にすることで売りやすくなるなどのメリットは確かにありますが、税負担や解体費用などの「見落としがちなデメリット」も空き家を更地にするか迷っている方に向けて存在します。
そこで今回は、税金の仕組みや、メリット・デメリット、代わりにできる対処法などを解説していきます。ぜひ参考にしてください。
空き家を更地にすると、なぜ固定資産税が高くなるの?
まず知っておきたいのが、「住宅用地特例」という減税制度です。住宅が建っている土地に対しては、以下のように固定資産税と都市計画税が大幅に軽減される仕組みがあります。
土地の状態 | 固定資産税 | 都市計画税 |
空き家あり | 1/6に軽減 | 1/3に軽減 |
更地 | 軽減なし(満額) | 満額 |
この特例は建物があることを前提とした制度なので、建物を解体してしまうと適用されなくなります。結果として「固定資産税が6倍に跳ね上がった…」というケースが少なくないのです。
「建物がなくなれば税金も減る」と思いがちですが、土地にかかる税金の方が大きく増えるため、注意が必要です。
また、都市計画税は市街化区域内の物件に課されるもので、固定資産税と同様、特例の対象から外れると税負担が一気に増えてしまいます。
放置しても危険?「特定空き家」にご注意を
「じゃあ壊さずに空き家のまま置いておけばいいのでは?」と思う方もいるかもしれません。ですが、管理が不十分な空き家は“特定空き家”に指定されてしまうことがあります。
特定空き家とは?
次のような空き家は、特定空き家と見なされる可能性があります。
- 倒壊の危険があるほど老朽化している
- ゴミや害虫が発生し、衛生的に問題がある
- 景観を著しく損ねている
- 周辺住民に迷惑をかけている
特定空き家に指定されると、行政からの「助言→勧告→命令→行政代執行(強制解体)」という流れで、厳しい対応を受ける可能性があります。
また、特定空き家に指定されると、住宅用地特例の対象外となり、税金が更地と同じくらい高くなるので、放置は大きなリスクです。
さらに、改善命令に従わなかった場合は罰金(最大50万円)や、行政による強制解体後にその費用を請求されることも。管理しないまま放置するのは、最も避けたい選択肢といえます。
空き家を更地にするメリット
空き家を更地にすることには、どのようなメリットがあるのでしょうか。
① 建物の管理が不要になる
老朽化した建物をそのまま持ち続けると、雨漏りやシロアリ被害、倒壊のリスクなど、管理が非常に大変です。更地にすれば、こうしたトラブルや手間から解放されます。
また、近隣住民とのトラブルになりがちな空き家の存在自体がなくなることで、精神的な負担も軽くなるという声もあります。
② 売却しやすくなる
買い手の立場から見ると「古い建物付きの土地」よりも「更地」の方が建築の自由度が高く、検討しやすい傾向にあります。特に、新築住宅を希望している人には魅力的です。
老朽化した建物の取り壊しを買主に委ねるよりも、最初から更地にして売り出すことで「すぐに使える土地」として需要が高まり、交渉もスムーズになることがあります。
③ 活用の自由度が上がる
更地にすることで、駐車場・貸地・アパート用地など、将来的な土地活用の選択肢が広がります。
特に、賃貸需要のある地域であれば、アパート経営などによる長期的な収益化も検討可能です。土地の特性や立地条件を見ながら、最適な活用方法を見極めることが大切です。
空き家を更地にするデメリット
一方で、更地にすることで生じるデメリットもあります。
① 固定資産税の増加
更地にすることで住宅用地特例が適用されなくなり、土地の固定資産税が最大6倍になる可能性があります。
都市計画税も含めると、年間で数十万円の差が出ることもあり、家計への負担は無視できません。
このように、税金面の負担が一気に跳ね上がる点は、更地化の大きなデメリットです。
② 解体費用がかかる
建物の構造や立地条件によって解体費は異なりますが、以下が目安です。
- 木造:1坪あたり4〜5万円
- 鉄骨造:1坪あたり6〜7万円
- RC造:1坪あたり8〜10万円
たとえば30坪の木造住宅を解体すると、約120万〜150万円ほどの出費が発生します。この費用は自治体によって補助が出るケースもあるので、事前に確認しておくと安心です。
③ 売却価格が必ずしも上がるとは限らない
「更地にしたほうが高く売れる」とすぐに結論はできません。実際には、建物付きのままでも需要があり、レトロ物件や古民家ブームの影響で、意外な買い手がつくこともあります。
また、更地にすることで解体費を自分で負担しなければならないため、結果として売却益が変わらない、あるいは損をするケースもあります。
更地にするなら活用方法を決めておこう
更地にすること自体は悪い選択ではありませんが「更地にして放置」では税金だけが増えてしまうリスクがあります。
そこで、更地にする場合は、あらかじめ活用方法を考えておくことが重要です。
活用の具体例:
- 月極駐車場として運用(例:月3万円×5台=月15万円の収入)
- アパート・店舗の建設による賃貸経営
- 企業や個人への貸地として提供
- すぐに売却(建築しやすい土地として需要アップ)
どの方法が適しているかは立地条件によって大きく異なりますが、「税負担をカバーできる収入源を確保できるか」を基準に考えると良いでしょう。
更地にしないという選択肢もある
もし、今すぐに土地活用の予定がなければ、更地にしないという判断も賢明です。
空き家のまま売る
築年数が古くても、リノベーション前提で購入したい人や古民家を探している層に需要がある場合もあります。「レトロ物件」としての魅力が伝われば、想定以上の価格で売れることも。
賃貸として活用する
DIY型賃貸として貸し出したり、部分的なリフォームで民泊や戸建て賃貸にすることで収入源にする人も増えています。地域に賃貸需要があるかを不動産業者などに相談し、可能性を探ってみるのも一つの手です。
更地にするかどうかは、「税」と「活用方法」で判断しよう
空き家を更地にすると、固定資産税の増加や解体費用といったデメリットがあります。一方で、管理が不要になり、売却や土地活用の自由度が高まるといったメリットも。
重要なのは、更地にした後に活用の見通しがあるかどうか。税金が上がっても、その分の収入が得られるのであれば、更地化は前向きな選択といえます。
ただし「空き家のままでも売れる・貸せる」という選択肢も存在します。
また、放置して「特定空き家」に指定されると、更地同様の税負担が発生するため、何もせずに放置することだけは避けるべきです。
- 活用できるなら、更地も選択肢に
- 活用見込みがないなら、空き家のまま売却や賃貸もアリ
- いずれにしても「放置」はNG
空き家の状態・立地・資金状況に応じて、自分に合った方法を見極めていきましょう。迷ったときは、空き家の解体や活用に詳しい専門業者に相談してみるのもおすすめです。
プロの視点から最適な選択肢を提案してもらえることで、後悔のない判断につながります。私達ウラシコにもぜひお気軽にご相談ください。