実家を相続したものの、遠方に住んでいるためなかなか足を運べず、気がつけば長期間空き家のまま放置してしまっているという状況になっている方も多いのではないでしょうか。「空き家を放置しておくと固定資産税が高くなってしまう」「何かしらの責任問題になってしまう」と不安に感じる方もいるでしょう。結論からお伝えすると、空き家の放置によって罰金が課されたり、税金が急増したりするリスクが存在するのは事実です。今回は、空き家を放置することによるリスクについて紹介していきます。

〇空き家を放置することで発生するリスク

空き家放置リスク

日本では「財産権」があるため、個人の持ち物をどう扱うかは原則として自由であり、単に空き家を所有し、人が住んでいない状態だからといって、直ちに罰金が科せられるわけではありません。

しかし、建物の老朽化が進み、周囲の環境に悪影響を及ぼすような状態のまま放置を続けると、法律に基づく「過料」という金銭的なペナルティが科せられる可能性があります。ここでは、空き家を放置することで発生するリスクについて説明していきます。

●行政からの指導と3つのリスク(ペナルティ)

放置空き家が恐ろしい

 特定空き家や管理不全空き家に指定されると、自治体から所有者へ段階的な行政指導が行われます。これを無視し続けると、金銭的負担が雪だるま式に膨れ上がる3つのリスクが待ち受けています。

①固定資産税が最大6倍に跳ね上がる(勧告段階)

 行政からの最初のアプローチは、状況の改善を求める「助言・指導」です。この段階で屋根の修繕や草刈りなどを行えばペナルティは発生しません。

 しかし無視を続けると、一段階重い「勧告」を受けます。勧告を受けると、「住宅用地の特例の解除」という大きな経済的ペナルティが発生します。「住宅用地の特例の解除」とは、住宅が建っている土地の固定資産税が最大で6分の1になる優遇措置(特例)がなくなることを意味します。勧告を受けるとこの特例の対象外とされ、翌年から土地の固定資産税が最大6倍に跳ね上がります。

②最大50万円の過料(罰金)が科せられる(命令段階)

 勧告を受けても放置を続け改善されない場合、自治体は期限を定めて解体などの措置をとるよう「命令」を行います。「助言・指導」や「勧告」がお願いベースであるのに対し、「命令」は法的な強制力を持つ重い行政処分です。この命令に正当な理由なく違反した場合、「最大50万円以下の過料」という重い金銭的なペナルティが科せられます。税金が6倍になった上に過料を支払わなければならない、厳しい状態に陥ります。

③強制的に解体される「行政代執行」と莫大な費用請求

命令にも従わず、倒壊の危険が切迫しているなど放置できない状況に至ると、最終手段の「行政代執行」が行われます。これは、所有者に代わって自治体が強制的に空き家を解体するということです。「自治体が勝手に解体してくれる」=「自治体が解体工事費用を負担する」ではありません。解体にかかった費用は、所有者に全額請求されます。行政が行う解体工事は相見積もりを取らないケースが多く、相場より高額になる傾向があります。数百万円から一千万円を超える請求が来ることも珍しくありません。

さらに、この費用は税金の滞納と同じように扱われるため、工事費用を支払えない場合は給料や預貯金、他の不動産などの財産が差し押さえられ、自己破産しても支払い義務は免除されません。

●放置空き家が抱えるその他の恐ろしいリスク

空き家を放置シロアリ

行政からの罰金や行政代執行の対象にならなくても、放置自体が非常に高いリスクをはらんでいます。

・損害賠償による億単位の支払いリスク

老朽化した空き家は、台風や地震などの際に危険な凶器となります。もし飛んだ屋根瓦が隣の家の窓ガラスを割ったり、倒壊した外壁が通行人に当たって大怪我をさせたりした場合、責任は空き家の所有者が負うことになります。民法の「土地工作物責任」により、建物の管理に欠陥があったと認められれば、所有者は多額の損害賠償を支払わなければなりません。人の命を奪うような事態になれば、数千万円から億単位の賠償金が請求される可能性もあります。

・犯罪の温床となるリスク

人の目がない空き家は、犯罪者にとって絶好の隠れ家です。粗大ゴミの不法投棄場所にされたり、非行少年のたまり場になったりするケースが少なくありません。その中でも最も恐ろしいのは「放火」です。枯れ草やゴミが放置された空き家は放火犯に狙われやすく、火災が発生すれば近隣住宅を巻き込む大惨事になります。管理体制が著しく杜撰であった場合は重過失とみなされ、所有者が賠償責任を負う判例もあります。

・近隣住民との深刻なトラブル

草木が伸びて隣の敷地に侵入したり、スズメバチが巣を作ったり、野良猫が住み着いて糞尿の悪臭を放ったりと、放置空き家は周辺環境を悪化させる要因になることがあります。これらは近隣住民からの苦情に直結し、自治体が指導に乗り出すきっかけとして、こうした近隣住民からの通報によるものが多くなっています。

〇ペナルティの対象となる建物とは

ここまでいくつかのペナルティやリスクについて説明してきましたが、実際ペナルティの対象となる建物はどのようなものなのでしょうか。ここからペナルティ対象となる建物について説明していきます。

●罰金や税金増額の引き金となる「特定空き家」

空き家の放置リスクを語る上で絶対に知っておかなければならないのが「空家等対策の推進に関する特別措置法(空き家対策特別措置法)」という法律です。この法律により、周囲に悪影響を及ぼす問題のある空き家は「特定空き家」に指定され、厳しく対処されることになりました。この法律において「特定空き家」とは、具体的に以下の状態のいずれかに該当する空き家を指します。自治体の調査によりこれらに該当すると認定されると、特定空き家としてリストアップされ、上述した行政からの指導の対象となります。

・基礎が崩れている、柱が大きく傾いているなど倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態

・ゴミが不法投棄されている、ネズミや悪臭が発生しているなど著しく衛生上有害となるおそれのある状態

・雑草やツルが建物を完全に覆い尽くしているなど適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態

・シロアリが大量発生して近隣に広がる恐れがあるなどその他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態

●「管理不全空き家」にも注意が必要

2023年の法改正により「管理不全空き家」という新たな枠組みが設けられました。これは、「今は特定空き家ではないが、このまま放置すれば特定空き家になってしまう恐れが高い空き家」のことです。窓ガラスが割れたままになっている、庭の雑草が隣にはみ出しているといった比較的初期の管理不足の段階でも、行政から指導が入る可能性が出てきました。

〇空き家放置に関するまとめ

ペナルティの対象となる建物

空き家の放置は、高額な過料(罰金)や固定資産税の急増、損害賠償といった取り返しのつかないリスクを招きます。「空き家にした=即罰金」ではありませんが、「悪質な放置の末路=過料(罰金に相当する負担)の支払い」となるのが現実です。相続などで空き家の所有権を持った場合にはとりあえずそのままにしておくのではなく、解体して更地にする、賃貸物件として貸し出す、リフォームして売却するなど状況に併せて適切な判断を行い、余計なリスクを被ることのないようにしましょう。

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